_
でかいこと言い続けてきたが、つまるところ中国は何もできなかった。
言い換えると「アリに振り回された象」という哀れな酷体をさらすことになった。
恫喝だけしか知らないという「外交無知」が極まった、ということだろう。
しかし、このままいくと
「いったい、我が国はほんとうに大国なのか?、本当に強国なのか?」
という不満が中国国民の中に生まれてくる。
それが沸騰すると、政権がダメージを食うことになる。
中国は、ボスザル外交から成長しなければならないという、変換点にきている。
そのいい例が今回の「中比対決」だろう。
ここから、どれほどのことが学べるのか、である。
今後も相変わらず恫喝外交一本なら、周辺諸国は中国の手の内を完全に読みきってしまうことになる。
脅しをかけるのはいい。
しかしそれが効を奏しなかったときは、単なる「負けセリフ」になってしまい、フラフトレーションが溜まる。
これが怖い。
『
JP Press 2012.05.29(火)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35295
領土問題に疲れてきた中国国民
フィリピンと交戦寸前の事態は「バスケ外交」で収束か
■「中国はいつ攻撃を開始するのか?」
「我らが海軍はどこにいるのだ。なぜ出動しない?」
南シナ海のスカボロー礁(中国名「黄岩島」)をめぐり中国とフィリピンの監視船が対峙した5月、中国のサイトではフィリピンとの交戦を促す声が高まった。
ネット上では血気盛んな若者たちが咆哮し、メディアには海軍少尉が登場。
「北緯15度07分、東経117度51分はフィリピンの領土の範囲ではない」
と鼻息を荒げた。
中国政府がフィリピンに対して「最後通告」を突きつけた5月8日前後は、まさに一触即発の状態に達した。
フィリピンでは民間活動家がマニラの中国領事館前で抗議デモを行い、中国国内でも連日、黄岩島の領有を主張する報道が続いた。
■中国メディアが「冷静な判断を」と呼びかけ
海上のにらみ合いの発端は、ちょうどそのひと月前の4月8日にさかのぼる。
悪天候のためスカボロー礁に乗り上げたと言われる中国漁船12隻だったが、直後に漁民らがフィリピン海軍に拘束された。
4月10日には
「黄岩島は中国固有の領土、フィリピン側の法的執行は中国の主権を侵犯する」
とし、中国から海域監視船が乗り出した。
中国は国際上の帰属の原則を引っ張り出し、
「黄岩島は中国人が最も早く発見し、命名した」
と主張した。
他方、フィリピンはスペイン統治時代の地図を根拠に、その領有権の正当性をぶつけた。
上海では「フィリピン産バナナの値段が高くなった」との声が上がった。
上海の青果店ではフィリピン産の果物が人気だが、店先に並ぶ量が減っている。
背景にあるのがこの南シナ海の対立だ。
中国が対抗措置として検疫を強めた結果、フィリピン産の果物が出回らなくなったのだ。
また、日本人コミュニティーの中では
「セブ島に行くなら今がいい。中国人がいなくなったから」
という軽口も聞かれた。
だが、にらみ合いもそう長く続くものではない。
5月半ばを過ぎると、中国では紙媒体を中心に「冷静な判断」を呼びかけるメッセージが繰り返された。
そこには、昨今の中国の強硬姿勢と暴走を危惧する、中国人による中国への牽制が読み取れた。
そもそも、中国が黄岩島の領有にこだわるのは、中国が管轄する海域に300億トンとされる石油と、石油700億トンに相当する量のメタンハイドレートが埋蔵されているためだ。
中国国内で耕地面積が減少していることへの危機感もある。
中国では
「耕地が18億ムー(約1億2000万ヘクタール)を下回ったら13億人を養うことができない」
と言われている。
将来の食料確保のためにも、豊富な海洋資源をなんとかして手に入れたいというわけだ。
■「大国のあるべき道」を説く有識者たち
中国には、国家としての目覚めもある。
19世紀には海上権益を列強各国に好きなように奪い取られ、国家として弱体化した。
そのコンプレックスを、世界2位の経済大国にのし上がった今、政治、外交の分野で振り払い、「逆襲」しようというのだ。
だが、海洋利権をめぐる中国の暴走ぶりは、国際世論の批判を浴びると同時に、最近は国内でも危機感を持って議論されるようになった。
■中国は海洋戦略の経験に欠ける
それが中国の有識者たちの危惧するところだ。
「中国は国家の命運と海上権益の密接な関係を理解していない。
短期、中長期にわたる海洋戦略と実現の手段が見えていない」
「中国はもはや自国だけでは発展できない。
中国の成長のためには東南アジアが必要だ。
東南アジア諸国との軍事衝突は中国を孤立させるうえ、
西欧諸国に中国との交易を減らすいい口実を与えるだけだ」
中国のある新聞は数ページを割いて、「大国のあるべき道」を説く有識者の見解を紹介した。
このグローバル時代にあって、もはや海上利権ばかりが国益ではない、という主張が目についた。
上海市民も「愛国」という言葉に大きく踊らされることはなかった。
「中国は大国と言っても、中身は弱体だ」(47歳、管理職)。
そんな辛口コメントもあれば、
「領土問題は民間人が語ったところでどうにもならない」(59歳、自営業)
という冷めた意見もあった。
■小国が大国にかみついてきた
他方、中国は今回フィリピンが黙っていなかったことに注目している。
「中国よ、フィリピンをいじめるのはやめろ」――。
5月11日、フィリピンで行われた抗議デモは、世界の主要都市に飛び火した。
デモの参加者には
「中国は他人の家の庭で暴君のように振る舞っている」
と憤る者もいた。
両国の領海をめぐる小競り合いは、これまでにも存在した。
1999年にはフィリピン軍と中国の11人の漁民を乗せた漁船が衝突した。
2000年には、フィリピン海軍が領海侵犯した中国漁船の船長を射殺する事件もあった。
しかし、当時はまだ中国が「強かった」。
中国が黄岩島で退去を呼びかけるとフィリピン側は素直にそれに従った。
だが、
「今回はいくら中国側が呼びかけても撤退しなかった。
これは深く考慮すべし」(東方早報)
と、背後にあるアメリカの力をほのめかす。
今回のにらみ合いは、中国とフィリピンの関係の希薄さを露呈したものともなった。
それぞれに切るカードがなかったとも言える。
中国側にあった外交カードは、せいぜいバナナの検疫強化ぐらいだ。
中国製品が世界の市場を席巻しているとはいえ、フィリピンではほとんど浸透していない。
フィリピンの市場は日本やアメリカブランドで埋め尽くされており、入る余地がない。
また、中国とフィリピンは民間交流もほとんど行われてこなかった。
そんな中国が今注目しているのが、日本とフィリピンの交流のあり方だ。
日本がフィリピンから多くの労働者や留学生を受け入れていること、奨学金などにも積極的であること、国際交流基金などが中心となって活発な文化交流を行っていることなどが、中国の専門家の間で評価されている。
同時に、フィリピンを研究する中国人が絶対的に不足していることも指摘された。
■互いに早く幕引きをしたかった
一触即発の状況に至った黄岩島事件だが、結局、「バスケットボール外交」で収束を見せるかのようだ。
中国の元NBA(米プロバスケット)バスケ選手、姚明(ヤオ・ミン)氏率いる中国のプロバスケチームをフィリピンに訪問させようとすることで、「手打ち」ムードが広がったのである。
中国では
「フィリピンは早い段階から打診をしてきていた。
5月18日には、フィリピンから正式に招待したいというメッセージを受け取った」
と報道されている。
中国も早期の事態収集を望んでいた。
アメリカや日本など「第三国の介入」
を恐れたため、とも言われる。
緊張感が高まった黄岩島事件は、海南島で黄岩島の天気予報を始めるなど、砲火なき領土主張に出た。
それでも報道では「平和外交」の4文字が散見され、正面からの“ドンパチ”は避けられる雰囲気だ。
緊張感が高まった黄岩島事件は、バスケ外交でフェードアウト。
報道でも、にわかにヤオ・ミン氏の笑顔とともに「平和外交」の4文字が強調されるようになった。
在留邦人は
「バスケで幕引き? 日本に対してはいつも強硬姿勢なのに」
と、この展開にやや拍子抜けしたようだ。
中国が「大国の道」を熟考した結果とも映る。
中国政府は、海洋戦略のあり方について多くの有識者に議論させ、「やりすぎはよくない」と言わせることで、うまく幕引きを図ったとも言える。
そして、黄岩島事件と入れ替わりに報道されたのが、中国の漁民たちが北朝鮮に拘束されたニュースだった。
「拘束中の食べ物といえばジャガイモばかり。
食べては吐く、を繰り返した」
「書類へのサインを拒絶したら棍棒で殴られた」
――そんな北朝鮮人の中国人に対する扱いに、中国人からは
「中朝関係は良好なはずだったのに」
と驚きの声が上がる。
領海紛争をめぐって中国人の「愛国心」は燃え上がるどころか、一部には戸惑いも見え隠れする。
「大国として周辺諸国とどう向き合うのか」
「“強い中国”の一点張りでいいのか」
という問題を突き付けられたのだ。
黄岩島事件を経て中国はどう変わるのか。
「大国」の戦略の行方が注目される。
』
アリにも翻弄される中国が、国際経験練磨の
外交大国日本
に勝てるのか?
軍事のひけらかしだけでは国際社会は通用しない。
それを補うのが外交だ。
その部分がまるで欠けているのが中国である。
余程のことがない限り、中国方式は通用しない。
それはおそらく共産党中央での権力駆け引きの結果として長期的展望が見えないせいだろう。
今この時の大言壮語だけが権力を維持できる手段だとしたら、とても将来の国際外交など見ようとは思わないだろう。
軍事力だけ増やすこと、つまり数字の拡大のみに邁進してしまうことになる。
その数の大きさで権力構造が決まってくるという体質が出来上がっているということであろう。
アジアはそのほとんどが日本外交の傘の下に入っている。
ために中国はアフリカあたりで外交に生を出すことになっているが、それでは勢力にはならない。
数合わせならアフリカでもいいが、やはり近隣諸国とはしたたかな外交を行うべきだろう。
『
サーチナニュース 2012/06/01(金) 11:17
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0601&f=politics_0601_007.shtml
中国外交部、当事国による南シナ海問題の解決を希望
中国外交部の劉為民報道官は5月31日、「中国は直接の当事国と、交渉と話し合いを通じて南シナ海問題を解決することに力を尽くしている。
南シナ海問題を複雑化、拡大化することは問題解決にマイナスであり、この地域の平和と安定にも不利である」と述べた。
中国国際放送局が報じた。
アジア太平洋地域で年に1度開催される安全保障と防衛フォーラムの第11回アジア安全保障会議(シャングリラ会合)が6月1日にシンガポールで開催される。
アナリストが「南シナ海問題が会議の議題となる可能性がある」としていることについて、劉報道官は、
「中国は南シナ海およびその周辺海域に対して争う余地のない主権を有している。
同時に、中国は直接の当事国と交渉と話し合いを通じて南シナ海問題の解決にむけ力を尽くしている。
中国とASEAN(東南アジア諸国連合)諸国は『南シナ海各方面行動宣言』および後続行動指針の合意に達した。
これらの文書のなかで、各方面は南シナ海で実務的な協力の展開を望み、争いを解決するための良好な雰囲気を作った」
と指摘した。
また、中国国防部が5月31日に発表した情報によれば、中国人民解放軍軍事科学院副院長の任海泉中将が代表団を率いて今回のアジア安全保障会議に出席する。
』
言葉ではらしいことを言っているが、客観的にみて、
中国の完敗
に終わった事件となりそうである。
中国は口先だけで何もできなかった。
_
2012年6月1日金曜日
ベンチャーがなぜロケットや宇宙船を打ち上げるの?
_
『
2012年5月31日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/qaetc/20120531-OYT8T00686.htm?from=navlk
ベンチャーがなぜロケットや宇宙船を打ち上げるの?
国際宇宙ステーションへの輸送事業や、宇宙観光事業への進出を目指しています。
今回、話題になった米国ベンチャー企業「スペースX」社は、自分たちでロケットと宇宙船を作りました。
打ち上げは無事成功し、宇宙船を国際宇宙ステーションにドッキングさせることもできました。
民間企業の宇宙船が、国際宇宙ステーションにドッキングしたのは初めてです。これまでドッキングしたことがあるのは、日本、ロシア、欧州の各宇宙機関が作った宇宙船でした。つまり国の事業。それを規模が小さいベンチャー企業が成し遂げたのですから、歴史に残る成果と言えるでしょう。
今回ドッキングした宇宙船は無人でした。
スペースX社ではこの宇宙船をさらに改良し、人が乗れるようにする予定です。
そうすれば今回のような荷物だけではなく、宇宙飛行士を国際宇宙ステーションへ送り届けることができます。
スペースX社では、7人乗りを目指しています。
米航空宇宙局(NASA)が開発し、昨年廃止したスペースシャトルの定員も7人。
ベンチャー企業の意欲や自信のほどがうかがえます。
米国ではほかにも、様々なベンチャー企業が、宇宙開発事業への取り組みを進めています。
例えば、インターネット通販「アマゾン・ドット・コム」の設立者、ジェフ・ベゾス氏が設立した「ブルー・オリジン」社は、ロケットと宇宙船を開発中です。
ホテル王のロバート・ビゲロー氏が設立した「ビゲロー・エアロスペース」社は、人間が滞在できる宇宙ホテルの建設を目指しています。すでに実験機も打ち上げています。ホテルへの輸送手段は、スペースX社が開発中のロケットと宇宙船を使う予定です。
スペースシャトルとよく似た宇宙往還機を開発中の「シエラ・ネバダ」社、繰り返し使える小型飛行機のような機体を開発中の「エックスコア・エアロスペース」社などいろいろあります。
ベンチャー企業が、こうした事業に乗り出す理由は幾つかあります。
まず、NASAがスポンサーになってくれる可能性があることです。
NASAは、国際宇宙ステーションへの輸送機を民間企業から調達する政策を進めています。
NASAの審査を通れば開発費を提供してくれます。
安くて良い輸送機が完成すれば、NASAが調達して使ってくれます。
ビジネス機会になるというわけです。
次いで、一般の人々向けの宇宙旅行事業への期待です。
国の宇宙機関が作ったロケットや宇宙船は価格が高いという問題があります。
これではビジネスチャンスもない。
ベンチャー企業の合理的な発想でロケットや宇宙船の価格を下げれば、旅行事業が実現する可能性があると見ています。
こうした取り組みを後押しているのは、米国の技術者の層の厚さと、ベンチャー企業を起こそうという精神です。
軍事利用の宇宙開発も含めると、米国は技術者の数も人材も豊富です。
人の流動性も高く、あちらこちらのベンチャー企業を渡り歩いて、自分の技術や能力を生かしています。
ベンチャー企業を起こそうという機運が強いことは、情報技術(IT)ベンチャー企業が米国で興隆したことからも明らかです。
ちなみに、ITベンチャー企業の代表格のマイクロソフト社の共同創業者であるポール・アレン氏も、衛星打ち上げ事業に取り組んでいます。
巨大航空機にロケットを搭載し、空中で衛星を打ち上げるという方式を目指しています。
地上からロケットで打ち上げるよりもコストが安くなるそうです。
一方、日本は、これまで人が乗ることができる宇宙輸送機を作った経験がありません。
日本の宇宙関係者は、開発費が巨大でリスクもあるので、政府が資金を投じて有人宇宙船とロケットの開発を進めるべきだと主張してきました。
しかし、米国のベンチャー企業の活躍ぶりが伝えられるにつけ、財政当局や一般の人々から
「ベンチャー企業ができることを、なぜ国がやる必要があるのか」
と迫られそうです。
米国の動き、日本の宇宙開発にもじわじわと影響してきそうです。
(編集委員 知野恵子)
』
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『
2012年5月31日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/qaetc/20120531-OYT8T00686.htm?from=navlk
ベンチャーがなぜロケットや宇宙船を打ち上げるの?
国際宇宙ステーションへの輸送事業や、宇宙観光事業への進出を目指しています。
今回、話題になった米国ベンチャー企業「スペースX」社は、自分たちでロケットと宇宙船を作りました。
打ち上げは無事成功し、宇宙船を国際宇宙ステーションにドッキングさせることもできました。
民間企業の宇宙船が、国際宇宙ステーションにドッキングしたのは初めてです。これまでドッキングしたことがあるのは、日本、ロシア、欧州の各宇宙機関が作った宇宙船でした。つまり国の事業。それを規模が小さいベンチャー企業が成し遂げたのですから、歴史に残る成果と言えるでしょう。
今回ドッキングした宇宙船は無人でした。
スペースX社ではこの宇宙船をさらに改良し、人が乗れるようにする予定です。
そうすれば今回のような荷物だけではなく、宇宙飛行士を国際宇宙ステーションへ送り届けることができます。
スペースX社では、7人乗りを目指しています。
米航空宇宙局(NASA)が開発し、昨年廃止したスペースシャトルの定員も7人。
ベンチャー企業の意欲や自信のほどがうかがえます。
米国ではほかにも、様々なベンチャー企業が、宇宙開発事業への取り組みを進めています。
例えば、インターネット通販「アマゾン・ドット・コム」の設立者、ジェフ・ベゾス氏が設立した「ブルー・オリジン」社は、ロケットと宇宙船を開発中です。
ホテル王のロバート・ビゲロー氏が設立した「ビゲロー・エアロスペース」社は、人間が滞在できる宇宙ホテルの建設を目指しています。すでに実験機も打ち上げています。ホテルへの輸送手段は、スペースX社が開発中のロケットと宇宙船を使う予定です。
スペースシャトルとよく似た宇宙往還機を開発中の「シエラ・ネバダ」社、繰り返し使える小型飛行機のような機体を開発中の「エックスコア・エアロスペース」社などいろいろあります。
ベンチャー企業が、こうした事業に乗り出す理由は幾つかあります。
まず、NASAがスポンサーになってくれる可能性があることです。
NASAは、国際宇宙ステーションへの輸送機を民間企業から調達する政策を進めています。
NASAの審査を通れば開発費を提供してくれます。
安くて良い輸送機が完成すれば、NASAが調達して使ってくれます。
ビジネス機会になるというわけです。
次いで、一般の人々向けの宇宙旅行事業への期待です。
国の宇宙機関が作ったロケットや宇宙船は価格が高いという問題があります。
これではビジネスチャンスもない。
ベンチャー企業の合理的な発想でロケットや宇宙船の価格を下げれば、旅行事業が実現する可能性があると見ています。
こうした取り組みを後押しているのは、米国の技術者の層の厚さと、ベンチャー企業を起こそうという精神です。
軍事利用の宇宙開発も含めると、米国は技術者の数も人材も豊富です。
人の流動性も高く、あちらこちらのベンチャー企業を渡り歩いて、自分の技術や能力を生かしています。
ベンチャー企業を起こそうという機運が強いことは、情報技術(IT)ベンチャー企業が米国で興隆したことからも明らかです。
ちなみに、ITベンチャー企業の代表格のマイクロソフト社の共同創業者であるポール・アレン氏も、衛星打ち上げ事業に取り組んでいます。
巨大航空機にロケットを搭載し、空中で衛星を打ち上げるという方式を目指しています。
地上からロケットで打ち上げるよりもコストが安くなるそうです。
一方、日本は、これまで人が乗ることができる宇宙輸送機を作った経験がありません。
日本の宇宙関係者は、開発費が巨大でリスクもあるので、政府が資金を投じて有人宇宙船とロケットの開発を進めるべきだと主張してきました。
しかし、米国のベンチャー企業の活躍ぶりが伝えられるにつけ、財政当局や一般の人々から
「ベンチャー企業ができることを、なぜ国がやる必要があるのか」
と迫られそうです。
米国の動き、日本の宇宙開発にもじわじわと影響してきそうです。
(編集委員 知野恵子)
』
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